inSPire は、シスコがサービス プロバイダー向けに厳選した、シスコの高度な技術と最新のニュースをお届けするニュースマガジンです。

シスコのサービス プロバイダー向け NFV/SDN 戦略

シスコの目指すサービス プロバイダー ネットワークの全体像と
Cisco Virtual Managed Service(vMS)ソリューション

「SDN に関するシスコの戦略がわかりにくい」。そう言われることが少なくない。なぜシスコの SDN 戦略がわかりにくいのか。それは多くの人々がイメージする SDN に比べ、シスコが語る SDN のカバレッジ範囲が広く、既存ネットワークとの整合性も強く意識したものだからではないだろうか。一般的に語られる SDN は、シスコが目指す SDN のサブセット的なものともいえる。そこで今回は、シスコの考える NFV/SDN の全体像を簡潔に示した上で、サービス プロバイダーを対象とした NFV/SDN への取り組みである「Cisco Virtual Managed Service(vMS)」ソリューションを解説し、ドイツ テレコムにおける vMS のユース ケース「CloudVPN」も紹介したい。

必要なのはクロス ドメインをカバーしたオーケストレーション

 データ プレーンとコントロール プレーンを分離し、ソフトウェア制御によってスピーディにネットワーク構成を変更できる「SDN (Software Defined Network)」。これを自社のビジネスに活かし、競争力を高めたいというサービス プロバイダーは多いはずだ。

 このようなアーキテクチャへと移行することで、データ転送の柔軟性は飛躍的に高まり、機器運用の自動化、簡素化も可能になる。例えば新たな顧客に対してサービス提供を開始する場合、従来ではあらかじめ決められたワークフローに従い、オペレータがサービス開通に必要な処理を行う必要があった。これに対し SDN なら、データ プレーンをソフトウェアで制御できるため、サービス開通のオペレーションを完全自動化することも不可能ではない。また既存顧客が利用サービスの内容を変更したい場合にも、顧客にポータル サイトを提供することで、セルフ サービス化することも容易になる。オペレーション コストを削減できる上、顧客にとっての利便性を高めることも可能になるのだ。各種ネットワーク機能を仮想化(NFV: Network Function Virtualization)すれば、セキュリティ機能や QoS 機能を装備したマネージド サービスの展開も容易になるだろう。

 しかし現在語られている NFV/SDN の多くは、データセンター内に閉じている。データセンター内のネットワークやネットワーク機能は仮想化、ソフトウェア制御できるようになっているが、それ以外のドメインにまで仮想化の恩恵が及んでいないケースが多いのだ。

 データセンター内だけのネットワーク仮想化は、構成がシンプルで理解しやすい。またサービス プロバイダーが実験的に取り組む場合にも、比較的ハードルは低いと言えるだろう。しかし実際に NFV/SDN に取り組んだ結果、まだ実用レベルに達していないと感じているサービス プロバイダーも多いようだ。ソフトウェア制御の対象が限定されていること、ソフトウェア化されたデータ プレーンの処理能力の低さ、仮想化のために新たな要素が加わることで管理対象が逆に増えてしまう、といったことが主な理由である。

 サービス プロバイダーが NFV/SDN を導入し、そのポテンシャルをビジネスに活かせるようにするには、この程度では十分ではないとシスコは考える。十分な実績を持つキャリア グレードの機器もソフトウェア制御の対象にできる必要があり、データセンター外の WAN や CPE もカバレッジに含めていく必要がある。その結果、シスコが目指すNFV/SDNのあるべき姿は、一般に議論されているNFV/SDNに比べて対象となるエリアが広くなっている。それ故に、一見理解しがたく見えるのかもしれない。

 しかし、より高い視点から眺めていただければ、シスコの NFV/SDN 戦略は決して複雑なものではない。これを 1 枚の図にまとめると、以下のようになる。

イメージ

 第 1 に注目していただきたいのが、マルチ ドメイン、マルチ レイヤをまたいだオーケストレーションである。これによってデータセンター内はもちろんのこと、WAN やアクセス ネットワーク、顧客側の CPE に至るまで、ネットワークに含まれる全ての要素の制御を集中化、自動化できるようになる。ここまでカバーすることで初めて、サービス プロバイダーにとって利用価値のあるものになると言えるだろう。

 第 2 は、モジュラ アーキテクチャを採用しており、NFV/SDN を構成する各モジュール同士が緩やかに連携していることだ。モジュール間のやり取りは、全てオープンな API と標準プロトコルで行われている。そのため同様の API/プロトコルに対応したものであれば、一部のモジュールを他社製品やオープン ソース ソフトウェアに入れ替えることも可能だ。

 第 3 は、既存の OSS/BSS とシームレスに統合できること。サービス支援やビジネス支援のスキームをそのまま活かしながら、NFV/SDN へと移行できる。

 そして第 4 が、モデル駆動型のメカニズムを採用していることだ。これは運用オペレーションの簡素化に、大きな貢献を果たす。

 それではこれらの戦略が、どのようなソリューションにつながっているのか。次のページからはその例を紹介したい。

シスコのサービス プロバイダー向け NFV/SDN 戦略

バックナンバー
Issue 19(2015年7月)Issue 18(2015年1月)Issue 17(2014年10月)Issue 16(2014年7月)Issue 15(2014年5月) Issue 14(2014年1月) Issue 13(2013年10月) Issue 12(2013年7月) Issue 11(2013年5月) Issue 10(2013年1月) Issue 09(2012年11月) Issue 08(2012年7月) Issue 07(2012年5月) Issue 06(2012年2月) Issue 05(2011年11月) Issue 04(2011年7月) Issue 03(2011年5月) 2011春の特別号(2011年3月) Issue 02(2011年2月) 創刊号(2010年10月) 創刊準備号(2010年7月)