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【コラム】変化する IETF

土屋 師子生 >プロフィール
シスコシステムズ合同会社
コンサルティングシステムズエンジニア

IETF [*1] 94 が 11 月 1 日〜 6 日横浜みなとみらいで開催された。
私は 2012 年の IETF 85 アトランタ以来の 3 年ぶりの参加になった。

普段、Webex で会話をしている社内の人間や、メールのやり取りはしたことはあるけれど、話した事が無い社内外の関係者と顔を合わす事が出来る良い機会だ。
久しぶりに顔を合わせ、声をかけてくれる人も多くいた。

その中の 1 人と、今回いない Cisco エンジニアリング CTO / チーフ アーキテクトの デビッド・ワード(David Ward、以下ワード。> プロフィール)の話をした。
ワードは IETF エリア ディレクターやワーキング グループ議長などを務め、2008 年の ITU-T と IETF の MPLS-TP JWT(Joint Working Team)でも中心的に活動。また、Open Network Foundation でもテクニカル アドバイザー チームのメンバーとして、OpenFlow の仕様策定に関連した人物で、現在は OpenDayLight リーダシップ ボード メンバーもしている。

今回も当然参加していると予想していたが、姿が見えなかった。

不思議に思っていたら、こんな話を聞いた。
ちょうど 1 年前の IETF 91 ホノルルの時に、ワードが IETF 参加者に向けて、ホスト プレゼンテーションをおこなったそうだ。

IETF などの Standards Development Organizations(SDO、標準化団体)は上流過程になりすぎて、実力主義にはなっていないのでは無いのか?
アジャイル スタイルの要求にいかに答える事が出来るのか?
古い技術と新しい技術の比較にどれだけ時間を費やしているのか?
自分たちの構造と離れたもしくは分離した問題、技術、アーキテクチャをどのようにハンドルするのか?
どうやって、運用者や IT の声を聞くことが出来るのか?
他のオープン ソース コミュニティの人達に IETF で標準化する事も求めるのか?

SDO でのペーパーワークは 2 年以上かかっていて、OSS(Open Source Software)でデファクト スタンダードの製品が出来るのは 1 年未満だ。

非常に厳しい現実を IETF の聴衆の前で改めて説明し、IETF の原則 ”Rough Consensus and Running Code(関係者間で緩やかな合意を取り、実際に動くコードで問題を解決していくという IETF の理念を表す)"の言葉を用いて、IETF の変革を求めた。

"Rough Consensus"は会合での手続きの事では無い
"Running Code"が必要なのは今であって、標準化が終わった後では無い
会話を少なくして、行動をもっと多くすべきだ。
Open Standards, Open Source, Open Loop(英語)

賛否両論があったようだが、このプレゼンが IETF および IETF 参加者に影響を与えたのは間違いないようだ。

多くの IETF のメンバーが前週の OpenStack Summit Tokyo にも参加し、IETF のやり方も 3 年前と比べ非常に変化しているように感じた。
様々な標準化団体およびオープン ソース コミュニティと連携が必要な YANG モデルの策定では、Github [*2] を用いている。
YangModels/yang

様々な実装のデモンストレーションを行う、Bits-N-Bites のイベントでは富士通、NECなどのメーカーのみならず、NHK が HTML5 を用いたハイブリッド キャストのデモをおこなっていた。

IETF の現場で実際のコーディングを行う IETF Hackathon は 70 名のエンジニアが参加し、新しいコードやツールを作成した。
多くの初参加者が新しいアイディアを持ってきて、また最年少の参加者は 16 歳だったそうだ。
IETF 94 Hackathon – Open Source and Open Standards in Yokohama

1986 年に始まった IETF は、今年 30 周年を迎えた。 我々の製品を支える要素技術やお客様を取り巻く環境、またそれに伴う要求はますます変化している。
より柔軟で迅速な対応が求められる。
変化していく IETF やその変革をリードしていくメンバー達を見て、技術に貪欲に、広く要件を聞き、実現をしていく能力をつけていきたいと 考えさせられた 1 週間になった。


[*1] IETF: Internet Engineering Task Force(インターネット技術タスク フォース)。インターネット技術の標準化を策定する組織。
[*2] GitHub: ソフトウェア エンジニアに向けた、ソフトウェア共同開発用の共有Webサービス。

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