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IoT 時代に求められるコンピューティング アーキテクチャを推進
オープンフォグ コンソーシアムの発足とシスコの取り組み

クラウド コンピューティングからフォグ コンピューティングへ。IoT の活用が本格化する中、ネットワーク エッジでデータ処理を行う分散コンピューティングの重要性が高まっている。2015 年 11月、これを推進するため、シスコを含む産学 6 組織の連携の下にオープンフォグ コンソーシアム(OpenFog Consortium)が発足した。本記事ではフォグ コンピューティングの必要性を解説した上で、オープンフォグ コンソーシアム設立の背景やこれまでの活動内容、そして将来の展望などについて紹介する。

IoT 活用の本格化で課題となるレイテンシ
フォグ コンピューティングによって解決が容易に

 あらゆるモノがインターネットに接続される Internet of Things(IoT)。その普及が本格化することで、ネットワーク アーキテクチャも変革が迫られている。ネットワークに接続されるデバイスと、そこで生成されるデータを処理するクラウドで構成される「クラウド コンピューティング」から、「フォグ コンピューティング」へのシフトが求められるようになっているのだ。

 フォグ コンピューティングとは、クラウドのポテンシャルを最大限に引き出しつつ、よりエッジに近い部分でインテリジェントな処理も行うという、新たなコンピューティング モデルである。次世代モバイル ネットワークとして提案されている「モバイル エッジ コンピューティング」の、スーパーセットのようなものだと考えれば理解しやすいだろう。例えばモバイル デバイスから送られてきたデータの処理を基地局で実行した上で、より上流のネットワークに送り出すようにすれば、データ送信量を減らし、クラウドの負荷を軽減できる。これと同様のことを、エッジとクラウドの間に「フォグ ノード」を置くことで実現するのだ。

 しかしフォグ コンピューティングへのシフトは、単にネットワーク経路上にフォグ ノードを追加するといった、コンポーネント レベルの変化ではない。エッジからクラウドまでの間を連続したシステムとして捉え、その中でコンピューティングやストレージ、ネットワーキングといった各種リソースを分散配置し、さらにそれらを協調して動かすための、水平分散アーキテクチャへのシフトなのだ。また対象となるプロトコルも特定のレイヤに限定されない。システム レベルの大きな変革をもたらすものなのである。

 それではなぜ IoT が本格化することで、フォグ コンピューティングへのシフトが求められるようになるのか。理由は複数挙げられるが、大きなポイントはレイテンシ(ネットワーク遅延)問題の解決だと言えるだろう。

 10 〜 100 秒オーダーのレイテンシが許容されるアプリケーションは、クラウドでも容易に処理可能だ。この種のものとしては、ファイル転送やデータ バックアップ、YouTube等のビデオ再生、ビデオ監視等が挙げられる。これらの中にはバンド幅の確保が必要なものもあるが、インタラクティブ性はそれほど求められない。

 それでは 100 ミリ秒 〜 1 秒オーダーのレスポンスが求められるものはどうだろうか。例えばWeb 検索や、インタラクティブな Web サイト等である。これらはクラウドでも処理可能だが、レイテンシを短縮するための工夫が必要だ。そのために最近では、WebSocket や HTTP/2 といったプロトコルが利用されるようになってきた。

 バーチャル リアリティやロボティクスのように高いリアルタイム性が求められる場合には、もはやクラウド コンピューティングでは対応しきれなくなる。求められるレイテンシは 1 〜 10 ミリ秒 オーダーとなり、この程度の時間はクラウドに到達する前に消費されてしまう。IoT 時代にはこのようなアプリケーションが、急激な勢いで増えていくのだ。

 それではデータ処理をデバイス側で行うのは解決策になるだろうか。実はこれも難しい。IoT デバイスには消費電力や専有スペース等の物理的な制約が課せられているため、十分な処理能力の確保が困難だからだ。また温度や湿度、振動等の環境条件が厳しい状況の中でいかにして信頼性を確保するのか、また盗難の危険性に対してどう対応するのかという課題もある。デバイス側に多くのデータを置くことで、リスクも大きくなってしまうのである。

 フォグ コンピューティングへとシフトすれば、これらの解決が容易になる。クラウドに至る前にデータ処理を行えば、レイテンシは小さくなり、ネットワークのバンド幅の制約も回避しやすい。またフォグ ノードは末端のデバイスに比べれば物理的制約が少なく、十分な処理能力を確保できる。さらに信頼性やセキュリティの担保も容易だ。

 また処理を適材適所で行うことで、トランザクション数の削減や、使用帯域の最適化も可能になる。短いレイテンシを求めるアプリケーションを扱わないケースでも、フォグ コンピューティングは大きなメリットをもたらすはずだ。

 IoT の領域では今後、フォグ コンピューティングが重要な役割を果たすことになるだろう。シスコでは IoT トラフィックの 40 %が、フォグ ノードを介してやり取りされることになるだろうと予測している。

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