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LDP / RSVP を不要にしスケーラビリティと柔軟性を向上
注目の次世代技術「セグメント ルーティング」とは

IETF の SPRING(Source Packet Routing in Networking) ワーキング グループでアーキテクチャが定義され、次世代のルーティング パラダイムとして注目を集めている「セグメント ルーティング」。スケーラビリティや自動化に限界があった RSVP-TE や LDP を不要にすることで、従来のネットワークが抱えていた限界を突破することが可能になる。今回はこのセグメント ルーティングの原理を簡単に解説した上で、サービス プロバイダーにとってのメリットを紹介する。

従来のトラフィック エンジニアリングの問題を解消したセグメント ルーティング

 サービス プロバイダーのネットワークは複雑化しており、そこを流れるトラフィック パターンも多様化している。その一方で、収益を高めるには顧客に高付加価値なネットワーク サービスを提供する必要があり、きめ細かいトラフィック制御へのニーズも高まっている。管理コストを増大させずに多様なサービスを提供するには、どうすればいいのか。

 この課題を解決する上で、大きな貢献を果たしているのが、トラフィック エンジニアリングである。

 通常の IP 経路情報に従った経路選択では、基本的に最短経路が選択される。その結果、特定経路にトラフィックが集中しやすくなり、サービスの内容に応じた柔軟な経路選択も難しかった。しかしトラフィック エンジニアリングを活用することで、経路を明示的に指定し制御することが可能になる。トラフィック エンジニアリングを実現するための経路情報を各ノード(ルータ)に配布するプロトコルとしては、RSVP-TE が知られており、多く運用されている。

 しかし RSVP-TE を用いたトラフィック エンジニアリングには、大きく 2 つの問題がある。第 1 はパケットの通過経路となるトンネルを作成するため、事前シグナリングが発生すること。第 2 は各ノードが経路に関するステートを保持する必要があることだ。その結果管理が複雑になり、スケーラビリティの制約や問題発生時の対応の難しさにつながっている。

 また SDN を前提に設計されているわけではないため、アプリケーションによるポリシー制御や、運用管理の自動化への対応も限られる。柔軟なサービスをスピーディに提供するには、十分とは言えないのである。

 これらの問題を根本から解決できるのが、セグメント ルーティングによるトラフィック エンジニアリングである。これはネットワークをセグメントで表現し、パケット ヘッダにセグメント情報を付加することで、パケットの通過経路を指定する、ソース ルーティングの 1 つ。注目すべきポイントは大きく 2 つある。

 まず LDP や RSVP を使用せず、IGP で直接セグメント ID を配布できること。ラベル配布プロトコルが不要になるため、ネットワーク運用がシンプルになり、トンネル作成のための事前シグナリングも発生しない。

 もう 1 つは TE-LSP のステート情報を各ノードに保持する必要がないことだ。これによってスケーラビリティの確保が容易になる。

 それではノードが保持すべきステートがどれだけ削減されるのか。それを示したのが下の図だ。

 N 個のエッジノードで構成されたフルメッシュ ネットワークを RSVP-TE で運用する場合、最大 N(N-1)/2 個の Midpoint ステートを管理する必要がある。つまり管理対象となるステートは、ノード数の 2 乗に比例して増えていくのだ。これに対してセグメント ルーティングでは、Midpoint ステートを管理する必要はない。ステートはパケットの中に含まれているからである。

 パケットのフォワーディングは、既存の MPLS や IPv6 をそのまま利用可能。そのため実装も容易だと言える。IETF での標準化も、2013 年 11 月に発足した「SPRING Working-Group」によって進められ、2016 年 5 月には最初の RFC ドキュメントがリリースされている。実際の適用はまだ始まったばかりだが、今後本格的な展開が進んでいくと見込まれている。

 それではセグメント ルーティングは、実際にどのような形で機能するのだろうか。

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