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LDP / RSVP を不要にしスケーラビリティと柔軟性を向上
注目の次世代技術「セグメント ルーティング」とは

効果的な高速迂回や SDN への移行も実現可能、既存環境からの移行も容易

 まず取り上げたいのが、トラフィック エンジニアリングである。例えば下図のネットワークで、ノード 2 〜ノード 3 の赤い部分を回避しながら、ノード 1 〜ノード 3 の経路を確立する方法を考えてみよう。

 この場合は、まず Prefix セグメントによってノード 7 までパケットを送り、その後ノード 7 の Adjacency セグメントを指定してノード 3 にパケットを送れば確実だと言える。

 もちろんこれと同様のことは RSVP-TE でも可能だが、セグメント ルーティングであれば、よりシンプルな形で実現できるのである。

 次に取り上げたいのが、リンク障害が発生した時の高速迂回だ。これまでにも MPLS-TE の FRR(Fast ReRouting)を使用すれば高速迂回が行えたが、リング トポロジの場合には必ずしも最適経路が選択されるとは限らなかった。例えば下図のようなネットワークでノード 1 〜ノード 2 でリンク障害が発生した場合、ノード 1 から ノード 7 へとパケットを送るには、MPLS-TE FRR ではパケットがいったんノード 2 まで行き、そこからノード 7と戻るのが一般的だ。しかしセグメント ルーティングを IPFRR と組み合わせれば、このような無駄を排除した迂回経路を 50 ミリ秒以内で確立できる。つまりあらゆるトポロジで、効果的な高速迂回が可能になるのだ。

 またこのようにネットワーク トポロジが変化した場合には、IGP によるルーティング テーブルの書き換えが完了するまでの間、マイクロループによってパケット ロスが発生する可能性がある。セグメント ルーティングならこの問題も回避できる。IGP が収束するまでの間に、パケットを通過させたいセグメント スタックを明示すればいいからだ。

 SDN コントローラと連携し、アプリケーション毎に最適な経路を設定する、といったことも実現できる。例えば低価格のデータ サービスはコストの安い回線を経由させ、VoIP は低遅延の回線を経由させる、といったことが柔軟に行えるのである。

 もちろん、これまで MPLS で提供してきた VPN サービスも、セグメント ルーティングでそのまま提供可能だ。LDP や RSVP が不要になった分、これもよりシンプルな形で実現できることになる。

 LDP や RSVP-TE を使用したネットワークからセグメント ルーティングへの移行も、それほど難しくない。

 まず LDP からの移行に関しては、セグメント ルーティングと LDP のラベルは共存可能であり、どちらのラベルを使用するかの設定を切り替えるだけでいい。そのため、LDP ネットワークを動かしたまま各ノードでセグメント ルーティングを有効化し、その後各ノードの LDP を無効化すれば移行が完了する。

 RSVP-TE からの移行では、トンネル TE の path-option を追加する方法と、トンネル TE を追加する方法がある。前者の場合は、RSVP-TE の path-option に加えてセグメント ルーティングの path-option を設定し、使用する path-option を切り替え、その後 RSVP-TE の path-option を削除する。後者の場合は、RSVP-TE のトンネル TE に加えてセグメント ルーティングのトンネル TE を設定し、論理インターフェイスを切り替えた後、RSVP-TE のトンネルを削除する。

 ネットワークの一部だけをセグメント ルーティングへと移行し、既存ネットワークと混在させることも可能だ。LDP と混在させる場合には、LDP のプレフィックスをセグメント ID にマッピングする「マッピング サーバ」を使用することで、LDP のドメインとセグメント ルーティングのドメインとの間のフォワーディングが実現できる。RSVP-TE と混在させる場合には、両ドメインの間にあるヘッド エンドで、RSVP-TE トンネルにセグメント ID を割り当てる「バインディング Binding SID(Segment ID)」を設定することで、ドメイン間のフォワーディングが可能になる。

 例えば下の図のようなネットワークで、ノード 1 から ノード 21 へとフォワーディングするケースを考えてみよう。まずノード 1 は、ノード 21 の Prefix SID(16021) 、ノード 3 が持つ Binding SID(40309)、ノード 3 の Prefix SID(16003)をスタックしてパケットを送り出す。ノード 3 では Binding SID(40309) が、ノード 3 〜 ノード 9 のトンネルの RSVP-TE ラベル(24000)に置き換えられる。このトンネルでノード 9 に到達した後は、ノード 21 の Prefix SID(16021)で目的ノードまで到達する。

 このようにセグメント ルーティングは、LDP や RSVP といったラベル配布プロトコルを排除でき、シンプルかつスケーラブルな形でトラフィック エンジニアリングを実現できる上、効果的な高速迂回や、SDN の実現も容易にする。またデータ プレーンは既存の MPLS や IPv6 をそのまま利用でき、既存ネットワークからの移行も容易なのである。

 管理コストを増大させずに多様なサービスを展開したいという、サービス プロバイダーのニーズを満たす上で、今後重要な存在になっていくだろう。

LDP / RSVP を不要にしスケーラビリティと柔軟性を向上
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