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IoT 市場の拡大がもたらすパラダイム シフトと
サービス プロバイダーが成長するためのビジネス戦略

3 ステージによる段階的なビジネス モデル変革

 その答えは「接続サービスの提供だけではサービス プロバイダーの成長は困難である」ということである。むしろ接続サービスをメイン ビジネスにしたままでは、収益性の悪化が懸念されるのだ。

 これを裏付ける数字の一部を可視化したのが、下のグラフである。

 2009 年から 2013 年の間、トラフィック量は年間 38 %の割合で成長を続けてきた。これに対し、総売上は年間 6 %しか成長せず、減価償却前営業利益(EBITDA)の成長はわずか 5 %にとどまっている(シスコ調べ)。つまりトラフィック量が増えても収益は横ばいという状況が、すでに全世界のサービス プロバイダーで見られるようになっているのである。

 500 億個もの IoT デバイスがネットワークに接続される状況は、間違いなくサービス プロバイダーに巨大なチャンスをもたらすことになる。しかし接続サービスの収益増大は期待できない。しかも IoT デバイスが持つ特性が、この傾向をさらに加速する可能性もある。

 多くの IoT デバイスのネットワーク接続は、膨大なデータをやり取りするスマートフォンなどのモバイル デバイスとは異なり、それほど大きなバンド幅を必要としない。また接続形態も、サービス プロバイダーに売上をもたらすセルラー ネットワークではなく、Wi-Fi のような無償のネットワークが利用されることが多くなると予想される。そのため IoT 市場では、接続あたりの売上が低下すると共に、セルラー ネットワークの接続数の伸びも抑制される可能性が高い。

 それではサービス プロバイダーにとって、収益のチャンスはどこにあるのか。それは接続サービス以外の、新たな付加価値サービスの提供である。

 上のグラフは、サービス プロバイダーにおける IoT 関連の売上比率が、この 5 年間でどのように変化するかを示したものである(Informa Telecoms & Media 調べ)。2015 年はほぼ 8 割の売上が接続サービスに依存していた。しかし 2020 年にはその比率は 40 %にまで低下すると予測されている。これに替わって増大するのが、プラットフォームの提供、業種特化型ソリューションやアプリケーションの提供、ビジネス インテグレーションだ。つまり IoT 時代のサービス プロバイダーのビジネス モデルは、接続サービス中心から、大きな転換を果たさなければならないのである。

 もちろんこの転換を一気に達成することは困難だ。そこでシスコが提案したいのが、3 つのステージによる段階的なビジネス モデルの変革である。

 まず「ステージ 1」では、IoT に対する接続サービス拡充にフォーカスする。IoT に対応するためにネットワーク接続のスケーラビリティを高めると共に、IoT に適した LPWA である「LoRa WAN」や Wi-Fi サービスを展開、これらを統合的に運用管理することで、課金の可能性を広げていくのである。

 次の「ステージ 2」では、特定の業種に特化した垂直方向のビジネス戦略を確立し、より付加価値の高いソリューションの提供を進めていく。そのためにはアプリケーション基盤の整備と API の実装が求められる。

 そして「ステージ 3」では、完成度の高い共通プラットフォームを確立し、幅広いパートナーとエコシステムを作りながら、多様なソリューションを水平展開できる環境を実現していく。この段階では、他のサービス プロバイダーに自社のソリューションを販売する、といったビジネス モデルも可能になるだろう。例えば Telefonica が AT&T の「Digital Life」というホーム オートメーション サービスのライセンスを受け、欧州での展開に取り組んでいるのは、そのモデルケースの 1 つだと言える。

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サービス プロバイダーが成長するためのビジネス戦略

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